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生産管理の基礎 前編(製造業の特徴)

  • 執筆者の写真: 山田 修司
    山田 修司
  • 2018年3月3日
  • 読了時間: 5分

商品は、製造~流通~小売~顧客という流れで運ばれていきます。製造は川上に位置しており、顧客は川下に位置しています。製造から顧客への商品や権利の流れを商流、顧客から製造への情報の流れのことを情報流と言います。ちなみに、お金のやりとりは金流、品物のやりとりは物流とも言いますね。


製造業というのは、資材を人の手や機械で加工・組立することで製品を作り出します。プラスチックやアルミホイル、あるいは基盤といった資材を仕入れて、顧客にとって便利に使えるようなよりよいものに加工して、それを製品として市場に出荷します。製造段階で、消費者のニーズを絶対に満たすために必要な基本機能、そして無くても使えるけれども合ったほうがより便利な製品として使えるようになる二次機能を製品に与えたりします


さて一方で、小売業は、顧客にとって足を運びやすい便利な立地に店舗を構えて、実際に顧客に手にとってもらったり、巧みな営業トーク、ポイントやアフターケアサービスなど、自らの店舗で購入したときのベネフィットを提案することで商品(製品)を販売します。例えば、パソコンという商品を市場で販売するとき、パソコンを購入したい顧客は、駅前などの立地にあるほうが立ち寄りやすく、実際に商品を手にとってみたりすることもしやすいわけです。その場でニーズをくすぐられて衝動買いしたりすることもあります。あるいは、Web通販サイトをよりユーザーにとって便利で使いやすい、わかりやすい形で提供していく形でも良いでしょう。小売業は立地という価値まで含めて、顧客に対して商品を直接的に提案していく、自らは足を運ばずに、お客さんのほうから自然と足を運んでくれるような環境にお店を構えるわけです。


製造業だと簡単にはできません。製造業では面積の広い工場が必要になってしまいます。土地代の高い駅前に工場を置くことはできません。機械や設備、倉庫だけではなく、資材を運ぶための通路、運搬トラックが乗り付けられるような駐車場、従業員のオフィスや駐車場、空調設備、自家発電設備、燃料の保管所、ゴミ置き場・・・など、とても多岐に渡る設備を置けるほどの広大な土地が必要です。郊外や地方、あるいは海外といったところに工場を建設していく必要があります。駅前に工場直結のアウトレット小売直営店を構えて顧客に直販するといった荒業は不可能ではありませんが採算に合いません。よって、そうした意味でも、製造~流通~小売~顧客という大きな流れの中においては、製造と顧客は最も離れた立ち位置に居ます。製造業では、お客様の声を自ら能動的に現場まで拾いにいかなければ、必然的に顧客のニーズや現実とかけ離れたゴミを作ってしまいます。小売業だったならば、すぐそこにお客様が居るわけですから、データやフィードバックはいくらでも収集できますが、製造業だとなかなかそうはいかないわけです。




市場の消費者ニーズを正確に把握していなければ、どのような独自の技術を持っていたとしても宝の持ち腐れになってしまいます。売れない製品を次々と企画して開発して売り出し始めます。作ってる人達はそれが自分達の仕事だというプライドを持ちながら真面目にやっているわけですから、なんとなく自分達が売れない製品を作り続けているような気はしていても、なんとなくだけでは作り続けることを止めることもできないという悪い状況に陥ったりします。製造と消費者の関係が近いときにはそうした状況には陥りにくいのですが、会社がある程度大きくなったりしてくると、製造と消費者との間には大きな溝が生まれます。その溝を乗り越えて、消費者ニーズを正確に認識し、売れる製品・売れる仕組みをすばやく提供していくことが、製造業にとっては死活問題になってきます。


消費者ニーズというのは、一般的に外部から収集してくる必要があります。例えば、製造業の営業担当者ならば、取引先の小売店の現場まで出向いてアンケートやデータを拾いに行く必要があります。そうして営業が足で拾ってきた情報を営業や企画の人だけで抱え込んでは顧客ニーズに沿った商品は作れませんので、営業が現場で拾ってきた貴重な情報を製造や開発の人にバトンタッチしてあげる必要があります。

しかし、製造・開発と営業の人というのは、やっぱり概ね仲が悪いです(笑

営業と製造の部署というのは、何も場を用意してあげなければ、お互いにコミュニケーションを取ることもしません。文化も思想も背景も異なるのでは仕方のない事情もありますが、そんなことを言ってたら、中小企業ならあっという間に新製品を作るお金がなくなって潰れてしまいます。


よって、会社としては、情報伝達のための場や仕組みづくりをして、情報をきちんと橋渡しできる環境を整える必要があります。そうして得られた情報を製品にインプットし、きちんと売れる製品を素早くスムーズにアウトプットしていく活動が、製造業において継続的に取り組まなければならない基本的な生産活動です。


今回は、生産管理の大前提でもある生産活動のお話でした。製造業ならば、生産活動は当たり前の活動なのですが、当たり前にやることが突然難しくなったりする部分でもあります。そのときの経営層の手腕に左右されやすい部分でもありますね。次回はちょっと本格的な生産管理のお話です。



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