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執筆者の写真山田 修司

コンティンジェンシー理論

まず、不確実性に対応する最善の方法というものは存在しません。


不確実性の高い環境の中では、あらゆるケースに対してどのように対応していけば最善なのかということは、事前に計画することはほとんどできないため、最善な事後的対応を迅速に遂行できる体制のほうが重要になってきます。


特に、組織という規模においては、組織そのものを外部環境の変化に対応できるように検討していく必要があります。


そこで、「こういった環境ではこういう組織が良いですよ」というような一定の指針や見解を示したものが「コンティンジェンシー理論」です。


代表的な「コンティジェンシー理論」としては、「ウッドワード」と「バーンズ&ストーカー」の研究があります。


「ウッドワード」の研究では、技術が組織構造を規定するものだと説明しています。


「大量生産」を得意とする組織の場合、毎日同じものを安定的に大量に作っていくわけですから、機械的な組織になっていきます。一方、「個別生産」の場合は、個人個人が毎日違う仕事をやっていくために、有機的な組織になります。


このように、「生産形態によって、組織構造は変わってくる」という研究が「ウッドワード」のサウス・エセックス研究です。


「バーンズ&ストーカー」は、外部環境が組織内部のシステムに影響を与えるとしています。


変化が遅く確実性の高い「安定的な組織」では、規則や手続き、明確な責任、階層関係が整備され、組織内部における公式化の程度は高くなり、多くの意思決定はトップマネジメントレベルで行われ、集権化される機械的管理システムが形成されるものだとされています。


一般的にも、安定的な組織というのは、ある程度以上の分業が進んでおり、組織内における先輩・後輩の関係が明確であることから、学歴や入社歴以外での評価が難しくなりがちで、年功序列やコネで職位が決定されることがほとんどです。


また、外部環境が安定的ならば、上司や先輩の過去の経験とまったく同じ手順が10年後でも通用するようなケースも多いため、独自の見解や意見を述べたりすることも難しく、上司・先輩の指示や命令に支配された職務、服従関係が強要されがちです。


一方、絶えず変化が起きる環境の中にある「不確実性の高い組織」では、規則や手続きのようなものは用意されていないか、仮に用意されていたとしても実際の現場レベルでは無視されており、多くの意思決定はロワ―マネジメントレベルで行われ、分散的な有機的管理システムが形成されるものであるとされています。


不安定な外部環境の中にある組織では、自然とあらゆる幅広い状況に対応するために限られた技能領域に限定されない多能工で組織が構成されていることがほとんどで、事実上の上司や先輩達による過去の経験とまったく同じ対応手順というものが2~3年後ですらまともに通用するケースがほとんど無いことから、そのときの担当者に対応に必要な権限が移譲されやすく、各個別の担当者による有機的な対応や調整がより重要になってきます。


しかし、外部環境の不確実性が高まるほど組織内部における部門やチームの細分化(分化)が発生し、増えすぎた組織間の調整は次第に困難になっていくという考えを「ローレンス&ローシュ」は示しました。


部門やチームが増加すると、それらの組織間の調整には多くの時間資源を投入する必要性が生ずるため、分化しすぎた部門の統合を検討するタイミングも発生します。


とはいえ、一口に「統合」といっても、トップダウンで一気にチームや部門を一つにまとめてしまっても喧嘩が発生して致命的な機能不全が発生してしまいますので、統合にも様々な統合レベルがあります。


まず、「統合担当者」を設置する方法があります。リエゾン担当者、コーディネータ、ブランドマネージャーなど、技術的あるいは事務的な調整役を各組織に設置して、一定の情報共有をすることを検討します。そこから気が合ったら、本格的なチーム統合を進めるということも可能です。


次に、「公式組織」を作る方法もあります。これは、プロジェクトチーム、マトリクス型組織、タスクフォースの設置といった複数の部門メンバーによって構成される横断的チームを、従来の組織やチームとは別枠でサブシステム的に作る手法です。このような公式組織は、革新的なことに取り組もうとすると横断的に膨大な意見や要望が集まってしまうことから失敗しがちですが、従来から社内にある製品やサービスをアップデートしていくようなチームを組織するときには有効です。


また、部門やチームがずいぶん増えたとしても「スラック資源」として活用する視点もありえます。チームが一定数以上に増えた場合、稼働率の低いチームが各所に点在するような状況が生まれますが、そうしたチームが持つ資源を組織全体の余剰資源として捉え、何かあった際にはそれらのチームが有している余剰資源を活用していくという手法も「コンティンジェンシー理論」としては有効です。ただし、あまりにも余剰が増えすぎると、会社としては単なる無駄なコストが大きくなることには注意が必要です。



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