生産性の評価指標は、投入量に対する産出量の比を計算することで指標となる値を求めることができます。つまり、インプットに対して、どれだけのアウトプットが出せたの?というところを明らかにするところから始まります。アウトプットというのは、産出量であり、生産金額、生産量、付加価値であることもあります。インプットは、労働量、あるいは設備や原材料の諸量だったり、または投入資本です。
一般的な話で言うと、生産性というのは大きければ大きいほど良好です。
ですが、ただアウトプットが大きいほど良いというわけではなく、「インプットに対して無駄なくアウトプットが出てくること」が重要です。もし仮に、アウトプットが市場の需要を過剰に大きく上回ってしまったならば、せっかく作った製品はムダになり、産業廃棄物(ゴミ)になってしまいます。なので、どんどん作ろうよ、色々いっぱい作ろうよという話ではなく、世の中の需要の範囲内、消費される範囲内で作っていきましょうというスタンスが大事です。産業廃棄物の量が多すぎるとゴミを処理・運搬するにも人手やお金はかかりますし、設備や機械にもムダにお金を払わなくてはならなくなってしまいます。そうしているうちに、いつかは会社のお金が尽きてしまって潰れてしまいます。需要のないものを作りすぎるというのは、会社にとっては毒になってしまいます。
工場のことをコストセンターと言うことがあります。会社が工場部門で利益を生み出そうとするとき、経営者は「コストを下げて利益を出そう」と考ることが多いです。より正確には、「アウトプットを需要量の範囲内に収めよう」とします。そうすると、利益は最適化されると考えられます。このとき注意したいのが、最適化という言葉の定義です。生産設備というものは日常的に故障するものですから、現場レベルでは需要量を上回る生産能力が必要です。主要な生産設備が故障停止したときには、復旧までに掛かる故障時間の間に、故障した設備の後工程を動かし続けられるだけの部品在庫の備蓄(バッファ)も必要ですから、この部品在庫を作って置いておける生産能力や倉庫設備。そして設備が故障したり、生産能力が一時的に低下するなどした際には在庫していた部品を間を置かずに放出してライン生産を継続できる仕組みや取り決めも必要です。一般的には、そうした仕組みや取り決めにはカンバンを使った管理をすることが多いと思います。
似たような用語では、組織が利用できる資源と組織を維持するために最低限必要な資源との差のことを経営では組織スラックという言葉があります。財務会計では、流動資産を流動負債で割ったものをスラックと言います。これらのスラックも、過剰に多すぎるとムダですし、少なすぎてもいけません。自分達の組織や文化、あるいは経営状況に合ったスラックに調整していけるのが理想です。また、アウトプットが比較的高い企業のことをリーン企業、アウトプットに対してインプットの量が比較的多い企業をスラック企業と言ったりすることもあります。成長率で比較すると、アウトプットの高いリーン企業のほうに軍配が上がりますが、やはりやり過ぎると毒になってしまうことがあります。
ちょっと脱線しましたが、生産量はPDCAのC(Check)のフェーズで指標を確認されます。どうやって確認するのかは、生産性の種類に応じて指標を使い分けたりします。労働生産性の指標は、工数・時間に対する生産量・生産金額の比。設備生産性の指標には、財務会計の考え方ならば操業度や標準原価計算。生産管理の考え方ならば、稼働率や歩留りを指標として使います。
歩留りを改善するには、原材料のムダを無くす、不良品(流出品)を作らない、不良品を早期発見し、発見したらその場で手直しして良品にしていくという活動が必要です。例えば、組み立て終わったものをその場ですぐに検査し、組み立て機械の故障や調整不足であれば、工程をすぐにストップして機械を修理する必要があります。修理可能な軽微な不良品の手直しには、どうしても人が直していかなければなりませんので人件費がかかります。なので、人件費よりも高単価な部品だけを手直ししつつ、低単価な部品なら手直しはしないというやり方が一般的ではないかなと思います。
あとは、直行率(ノータッチ適合数量/スループット・処理時間)という指標があります。これは、途中で手直しが入らずにノータッチで検査に最後まで一発合格した製品の比率です。製造業の各メーカーは、直行率を上げることに注力しています。現場では、1時間おきに直行率や歩留まりをデータを入力・確認し、ライン運転停止後やシフト交代毎にも確認や引き継ぎをすることで、翌日や翌週、あるいは翌シフトでの目標生産数を決定していきます。
しかし、エクセルを操作したことがない人も多いので、データ入力作業を担当できる人が限定されていたりするのも悩みどころになったりすることもありますね。また、人の手作業が途中で入るようなラインだと工程を一つすっ飛ばしてしまったりして、一ロット分の部品や組み立て品を全損したり、現場ではアクシデントは付きものですし、複雑な機械装置は本当に頻繁に故障したり、性能が劣化したりします。
機械が停止してバッファ用の在庫も全部無くなったら掃除しかやることがなくなりますが、掃除でどこかの機械の調整が狂ってしまい、ラインが動き出したら不良品がどんどん出てきたり、ちょっと誰かが休もうとして壁に体重を預けたら、そこには普段は使っていない緊急停止ボタンが設置されていてラインが突然止まったり、本当に工場の中というのは色んなところに止まる要素があります(笑
工程が複雑かつ多ければ多いほど、生産の3Mを管理してQCDや生産指標を守っていくための苦労というのは並々ならぬものになっていきますから、生産の4Mの管理はとても重要なことだということになります。
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